少し前の梅雨真っ盛りの話になる。私の部屋からは家の玄関がちょうど正面に見えるのだが、雨が降ると猫が玄関前で雨宿りをしにくる。郵便の配達やお客さんが来た時はすぐそばの茂みに隠れるのだが、しばらくするとまた戻ってくる。私はそれを見ながら惰眠をむさぼっていた。

玄関先で休憩していた猫は黒猫だが、足袋を履いてるかのように足元だけ真っ白だ。猫がおしゃれに気を遣う時代になったのだ。ていうか私よりおしゃれじゃないか。

黒猫は幸せを運んでくると昔から言われている。黒猫はよく忌み嫌われるが、黒猫に逃げられるということは幸せに逃げられるということになる。黒猫を嫌っている人は幸せを嫌っていることになるのだろうか。一見黒く見えても幸せなものがたくさんあるのかもしれない。

 

三十分ほどして太陽が顔を出して猫は去って行った。夕立だったようだ、雨が降ったらあの猫はまた戻ってきてくれるのだろうか。